組織変革に必要な人材の育て方
2024.10.29
今回のインサイトは「組織変革に必要な人材をどう育てていくのか」がテーマ。
生産性向上に伴奏するCXかえる事業部の専門家が、企業の管理部門が抱える悩みのひとつである組織の生産性を高める方法について、「人材・組織・環境」の面から成功のポイントをお伝えしていきます。
目次
専門家 プロフィール
株式会社ライフワークスタイルラボ
CXかえる事業部
ソリューション開発・企画グループ
シニアマネージャー 飯島宗裕
ベンチャー企業の人事責任者、人事コンサルタント、研修講師など人材開発や人材育成に携わって20年以上。
教育制度や評価制度の構築及び「働きがい」「働きやすさ」を生み出す研修や組織開発を得意としている一方、日本酒コンサルタントとしても活動。
「人づくり、酒づくりの専門家」として活躍中。
中小企業診断士、利酒師。
自分の考え方で、行動は変わる
これは私の体験談です。7年ほど前の話ですが、仕事が忙しく、終電で家に帰らざるを得ない日が続いた時期がありました。
ある日、「今日も残業で帰れません」と妻にメールをしました。20時になっても仕事が終わらず、
終わりが見えなかったからです。すると、数分経って、妻から返信がありました。
『帰れる?帰れない?帰らない?帰りたくない?』
妻が冗談でこのメールを送ったのはわかってはいるものの、私はすぐに帰宅しました!
つまり、本当は「帰れる」ことができたのです。
このことは、言い換えれば「帰る」という選択肢を捨ててしまっていた、とも言えるでしょう。
「どうやれば帰れるのか」「どこまでやれば帰れるのか」という挑戦ではなく、
「残業すればいいじゃない」「時間はたくさんあるから大丈夫」という逃避をしていたのかもしれません。
この妻の一言は、自分にとって大きく影響を受けました。
「自分の考え方次第で、行動を大きく変えることができる」
という気づきにつながったからです。
そして、これは組織変革にも大きく関係することだと思います。
変えられない「ジンザイ」が増えている
「4つのジンザイ」という話を聞いたことはあるでしょうか。
ジンザイには「人材」「人財」「人在」「人罪」の4つのタイプがあるという内容です。
※ 諸説あり
人材:まだ経験は少ないが、今後の成長が期待できる、素材としてのジンザイ
人財:与えられた仕事ができるだけでなく、向上心を持ち、さらなる成長も期待できるジンザイ
人在:与えられた仕事はできるが、向上心は無く、現状維持で良いとするジンザイ
人罪:仕事もできず、成長も期待できないジンザイ
上記4つの中で、「人財」タイプばかりの組織であれば、組織変革はスムーズにいくのですが、
組織の中で最も多いのは「人在」タイプではないでしょうか。
人在タイプの特徴として、「自分に与えられた仕事はできる。でも、慣れたやり方を変えたくない」という傾向が見られます。
たった一言でも相手を変えられる
先の話にあったように、私も「仕事が終わらないなら、残業すればいいじゃない」という考え方を持っており、人在タイプの考え方でした。でも、そこで「早く帰るために何をすればよいのか」という考え方に気づくことで、人財タイプの考え方に切り替わったのだと思います。
その切り替わりは、妻からのメールでした。
このような機会がいつもあるわけではありませんが、たった一言で行動を変えることはできると私は考えています。
北海道にある会社の社長、植松努氏の「思うは招く」という講演の動画は、YouTubeにおいて700万回以上再生されています。その講演において植松氏は「どーせむり」という言葉は使わずに
「だったらこうしてみたら」を伝えることで、相手の行動を変えられると言っています。
相手の行動を変えるために、研修を行うという方法も有効です。
しかし、身近な人が、たった一言を伝えることで、意識を変え、行動させることもできます。この一言を発信することが、組織変革のための人材育成の1つであると言えるでしょう。
メンバーを本気にさせる
組織変革に求められる人材育成について、もう一つ別の観点からお話ししたいと思います。
変革にはパワーが必要であり、そのパワーの源は「その変革にどれだけメンバーが本気に取り組んでいるか」だと思います。つまり、その変革に対して「いかにメンバーを本気にさせるか」が鍵となります。
ハーバードビジネススクール名誉教授であるジョン・コッターは「変革の8段階のプロセス」を示し、その最初のプロセスとして「危機意識を生みだす」、2番目のプロセスとして「変革推進チームを築く」と述べています。私はこの2つが「メンバーを本気にさせる根幹」であり、最も大切だと考えています。
とくに、組織に多く存在する「人在タイプ」に挑戦する意欲を持たせるには、この「危機意識を生み出す」というやり方は必須です。「なぜ変わらなければならないのか」、「変わらないとどうなってしまうのか」を伝え、「やらざるを得ない」状況であることを認識させなければいけません。そのうえで、「本気なメンバーのチームづくり」を行うことが求められます。
ここでのポイントは「本音をぶつけ合う」ということです。
本音をぶつけ合いチームにしていく
最初にしっかりとチームメンバーが話し合い、方向性を合わせないと、変革は失敗するといっても過言ではありません。そして、この話し合いは否定しあうものではなく、先に述べた「だったらこうしてみたら」といった肯定的なものにすることが有効です。
以下は、赤字飲食店を黒字化するプロジェクトを担当した時の私の経験談です。
私は店長(兼コンサルタント)というポジションだったのですが、なかなか赤字から脱却することができませんでした。
その時、店のナンバー2である料理長とは仲が悪く、お互いに「店の売上が悪いのはあいつのせいだ」と考えていました。ある時、なぜか私と料理長が2人きりで飲む機会がありました。
そこでお互いの想いをぶつけたところ、「多くのお客様に喜んでもらいたい、またこの店に来たいと思わせたい」という想いは同じでした。ただ、そのやり方がかみ合っていなかったのです。
その日、朝まで議論したことを覚えています。初めてお互いが本気になった瞬間でした。その後、お店は黒字化に成功しましたが、これは料理長をはじめとするメンバーのおかげです。
今回は、私の経験談をもとに、いかに組織を変えることができるのかを述べさせていただきました。人材育成の観点からすると、組織変革を成功させるためには、まずそのプロセスをしっかりと理解したうえで、そのプロセスを遂行するためにどのような知識やスキルが必要なのかを見極め、研修と実践で磨き続けることが必要だと思います。
そして、そのポイントが今回ご紹介した「一言でも相手を変えられる」「メンバーを本気にさせる」ことだと、私は考えます。
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~組織変革に必要な人材をどう育てていくか~
近年は、社会やビジネスにおいて変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の4つの特性を持った「VUCAの時代」と言われています。
それだけ企業を取り巻く変化が激変しているわけですが、この変化を「チャンス」とするか、「リスク」とするかは、企業やそこで働く人々が 「変化に挑む」 ことができるかどうかが大きなカギとなっています。
一方、多くの企業や人はリスクをとることを恐れ、変化を避ける傾向にあります。
そして、変化のタイミングを逃してしまい、気がついた時にはお金も時間も余裕がなく、
衰退もしくは最悪の場合には倒産してしまうケースも増えているのです。
多くの経営者や人事担当者はこのことを理解しており、そのための施策を講じています。
ただ、残念ながら成果を出している企業はほんの一握りでしょう。
今回のセミナーでは、成功例・失敗例をもとに、どのようなプロセスで組織変革を行うべきなのか、
組織変革を進めることができる人材をどのように育てていけば良いのかを、具体的な手法をふまえて解説します。
■このような方にオススメ
・ VUCAの時代に対応できる人材を育て、守りの姿勢から脱却したいと考えている経営者や人事部門の方
・ 組織を変えたいと思い様々な研修を行っているが、期待する効果が出ていないとお悩みの研修担当者の方
・ プロフィットセンター(利益創出部門)の成果向上を支援する人事部門のあり方を知りたい方。
【おまけ】利酒師 飯島の今日の一杯
私は日本酒のコンサルタントもしています。
酒造りの世界は長い歴史があり、伝統を重んじている蔵もたくさんあります。
ただ、今は昔と違い、「家庭ではなくお店で飲むことが主流になった」「お酒と一緒に食べるものが和食ではなく洋食や中華などバリエーションが増えた」「お酒の種類が増え、日本酒以外にも豊富なラインナップになった」などの変化が起きています。
その中で、伝統を守りながらも、その変化にチャレンジする蔵も増えています。
滋賀県にある「七本槍(しちほんやり)」(富田酒造)。460年の歴史があり、現在は15代目です。
「守るべき部分は変えずに守り、変革する部分は果敢に挑戦する。」という想いでお酒を醸しているそのお酒は、味わい深く、様々な料理に合わせやすいのが特徴。私も大好きな蔵の1つです。
みなさん、今日もお疲れ様でした。
美味しい一杯で、乾杯しましょう。