キャリアアップ拒否症候群が増えている今、会社は何をするべきか?
2024.10.30
今回のインサイトは「会社の将来をけん引する人材を生み出すには」がテーマ。
生産性向上に伴奏するCXかえる事業部の専門家が、企業の管理部門が抱える悩みのひとつである組織の生産性を高める方法について、「人材・組織・環境」の面から成功のポイントをお伝えしていきます。
目次
専門家 プロフィール
株式会社ライフワークスタイルラボ
CXかえる事業部
ソリューション開発・企画グループ
シニアマネージャー 飯島宗裕
ベンチャー企業の人事責任者、人事コンサルタント、研修講師など人材開発や人材育成に携わって20年以上。
教育制度や評価制度の構築及び「働きがい」「働きやすさ」を生み出す研修や組織開発を得意としている一方、日本酒コンサルタントとしても活動。
「人づくり、酒づくりの専門家」として活躍中。
中小企業診断士、利酒師。
管理職になりたがらない若手社員
「おめでとう、今度課長に昇進だよ!」
「そうなんですか。なら、会社辞めます」
これは、嘘のような本当の話。
残業代がもらえない、責任が増える、プレイヤーとして働きたいのにそこまでして働きたくない・・・。
理由は様々でしょうが、管理職になりたがらない若手社員が増えています。
東晶貿易株式会社が運営している「転職サイト比較plus」が2022年に実施した「全国の20代出世欲に関するアンケート(回答数2027名)」によると、「将来、役職者になりたいか」の問いに対し、「なりたくない」と回答した方が77.6%にも上りました。この数字、皆さんはどう感じますか?
確かに、働くことに対する価値観は変化しています。
「この会社で社長になりたいです!」といった野望の声は、かつては採用面接で聞かれましたが、
今ではそのような発言はあまり聞かれないように思います。
このように、若手社員が自らのキャリアアップを望まないことを、私は勝手に「キャリアアップ拒否症候群」と呼んでいます。当然ながら、そのような人材が増えてしまうと、それまでの人材育成にかけた投資がムダになるだけでなく、管理職の不足につながり、最悪のケースとして組織の存続が危ぶまれることになりかねません。
今の仕事が好きか
パナソニックの創業者、松下幸之助氏は著書『指導者の条件』(PHP研究所)に以下のように記しています。
「ことわざにも“好きこそものの上手なれ”ということがあるが、この“好き”ということは何をやるにしても一番大切だと思う。好きでないことをいくらやっても、その道で成功するのはむずかしいといってもいいのではないだろうか。芸術家でも運動選手でも、好きであればこそ、はげしい練習、きびしい訓練をも苦とせず精進努力するわけである。それでも、一流となり、成功することはなかなかむずかしい。まして、好きでもない人がやって、それでうまくいくわけがない。」
これは、当たり前のことのように聞こえるかもしれません。
では、「今の仕事が好きですか」という問いに、はっきりと「好きです!」と答えられる社員はどの程度いるのでしょうか。
新人研修や若手社員向けの研修は「仕事のやり方」や「仕事をする上でのスキル」を学ぶ内容がほとんどです。しかし、私は「いかに自分の仕事を好きにさせるか」が重要であり、これらの研修の中に取り入れるべきだと考えています。別の言い方をすれば、「その仕事が好き」になれば、職場の方に聞いたり、独学で学んだりしながら自分で吸収していきます。少なくとも、「仕事が好きではない」状態で研修をするよりも効果は期待できるでしょう。
また、この仕事が「好きである」という価値観は「管理職になりたい」という価値観につながります。ただ、社員の中には「仕事が好きではなくとも、給料が高ければ管理職になる」という価値観の方もいますから、絶対とは言えません。現に、私もあるクライアントに対し、管理職と非管理職の給料に大きな差をつけて(残業をしても追いつかないくらいに!)、管理職を目指す意識を高める手法をとることもあります。しかし、そのような手法をとることのできる企業は多くなく、給料以外の部分での意識づけが必要です。その1つのヒントが「その仕事を好きにさせる」ということです。
(今回は「その仕事を好きにさせる」という表現を用いていますが、「その会社」「そのブランド」
「その商品・サービス」を好きにさせるという切り口もあります)
まずは管理職が「憧れの存在」になる!
では、新入社員や若手社員に「仕事を好きにさせる」ための研修をすればキャリアアップ拒否症候群消えるのかと言えば、そうではありません。なぜなら、キャリアアップ拒否症候群がおきる原因は若手社員の価値観だけではないからです。
私は数多くの組織を診てきましたが、「上司・先輩である今の管理職が疲弊して働いている、会社の愚痴を言っている、将来のある話をしない」という姿を目にしました。つまり、「管理職になりたくない」という価値観を若手に形成させているのは、今の管理職も関係しているのです。
いくら若手社員が「自分の仕事が好き」だと思っていても、今の管理職の姿を見て「なりたくない」と感じてしまったら、当然キャリアアップを望まなくなるでしょう。「うちの会社の管理職は何かカッコいい、いつもイキイキしている、未来を語ってくれる」のような「憧れの管理職」をイメージしてみてください。そのような人が、皆様の会社にどの程度いますか?
つまり、「今の仕事が好きか」ということだけでは不十分であり、「この会社をけん引する人材になりたい」と思わせること。そのためには、管理職が「憧れの存在」になることがポイントです。そのためには、そもそも今の管理職が「自分の仕事が好き」であることが必須です。そのような仕組みや研修を行わずに、若手社員だけに「モチベーション向上研修」をする企業が多いのですが、ほとんど効果はないでしょう。会社にいる全員が、この会社を、この仕事を、この商品・サービスを好きになる。
そのような仕掛けが必要ではないでしょうか。
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会社の将来をけん引する人材を生み出すには 人材開発編
~キャリアアップ拒否症候群が増えている今、
会社は何をするべきか?~
「おめでとう。今度、課長に昇進だよ!」
「そうなんですか。なら、会社辞めます!」
上のやり取りは、嘘のような本当の話。
多くの会社でキャリア研修が実施されている一方、若手社員がキャリアアップを拒否する
ケースが増えています。その原因は「自分のやりたい仕事をやって、ある程度稼げれば良い」
といった本人の価値観によるものかもしれません。しかし、そのような人材が増えると、将来
組織をけん引する人材が不足し、会社そのものの存続に影響するでしょう。
今回のウェビナーでは、若手社員がキャリアアップを拒否する理由とは何かを紐解くとともに、
どのようにすれば若手社員をその会社で成長させ、会社をけん引する人材にしていくことができるのかについて解説します。
【おまけ】利酒師 飯島の今日の一杯
私は日本酒のコンサルタントもしています。
酒造りの人たちも、自分の造っているお酒に誇りを持っています。
そして、そのお酒を飲んで幸せになってほしい、という想いを持っています。
(私も昔酒造りをしていましたが、その時はこの誇りと想いを強く持っていました)
その誇りと想いがあるからこそ、自分の仕事が好きでした。
そのような「自分の好きな仕事」をしている人たちが働いているからこそ、
多くの蔵元は100年以上続いているのだと思います。
茨城県にある「須藤本家株式会社」は、現存する企業で最も古いとされる蔵元。
1141年創業で883年存続しており、なんと2017年時点で55代目!
定番酒は「郷乃譽(さとのほまれ)」。料理を引き立てる、飲み飽きしないお酒です。
今日も楽しくお酒が飲めるのは、蔵元の皆様のおかげです。感謝。
みなさん、今日もお疲れ様でした。
美味しい一杯で、乾杯しましょう。